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薔薇いくたびか(1955年)~近郊農村では~

昭和30(1955)年に公開された、大映制作による作品。
出演者は根上淳・若尾文子・南田洋子・長谷川一夫他、監督は衣笠貞之助。

弓子(若尾)は芸大受験時に同じ受験生の光子(南田)と知り合う。そして、光子を迎えにきていた兄真一郎(根上)とも出会い、2人は惹かれあう。しかし...光子が芸大に合格した一方、弓子は不合格に。そんな弓子に嫁入りの話が浮上するが、真一郎のことが忘れられない弓子は、お互い名前を聞かなかった光子を探しに芸大を訪れる...も空振り。一方、真一郎にも縁談が持ち込まれる...が、真一郎も弓子を忘れられない。そして新聞に尋ね人の広告を出す...が、これが理由で弓子は嫁ぎ先から追い返されたり、2人が1年振りに出会って結婚へ...という時、真一郎は弓子が純潔でないことを知ってしまったり...と色々ありながらも、最後は丸く収まる...という内容。

当時の大映スター総出演による恋愛作品。上記以外にも、市川雷蔵・勝新太郎・山本富士子・船越英二・菅原謙二・京マチ子...と錚々たるメンバーが出演。学生服姿の勝新太郎なんてなかなか見れません。

さてこの作品、高度成長期直前の昭和30(1955)年に公開されているわけですが、高度成長期特有のシーンとはまた異なる「興味深い」点が多く見られます。

真一郎(根上)・光子(南田)の父親は社長をしており、都内にある豪邸に住んでいる。一方、弓子(若尾)は農家の娘であり、受験の度に電車で行き来している...という設定。

そして、弓子が住む地域(農村)では「足入れ」という風習がある、という場面が出てきます。

これは、嫁入りに際して、「結納と同時に先方へ入り、しばらく一緒に暮らす」ことを言い、先方が気に入らなければ追い返され、気に入れば式を挙げる...という風習とのこと。調べてみると、日本全国の農漁村では結構ポピュラーなものだったらしいのですが...初めて知りました。なんか理不尽という感じもしますが。

では、この風習があった「弓子の住んでいる農村」とはどの辺りなのかな...と観ていると、「上野から電車で帰る」という台詞があった後、63形と思しき電車内で吊革を持つ弓子のシーンが出てきます。弓子の後方にある中吊りに「松戸競輪」の文字を確認できますので、常磐線であることが分かります。当時の常磐線で電化されていたのは「上野~取手間」ですから、遠くても取手までにあった農村だろうと考えられます(ま、取手から乗り換えて...なんて言われたらそれまでですが)。

弓子が住む農家・嫁ぎ先を始め、農村風景が度々映し出されますが、現在の取手からは到底考えられない光景です。それにも増して、昭和30年頃の取手辺りで「足入れ」なんていう風習があった...もしくは、そういう設定自体が不自然とは感じられなかった...ということに驚きます。これが「東北の山深い山村では...」と言われれば「さもありなん」という感じですが。
今では東京のベットタウンとして10万人強の人口を抱える取手市...がベットタウン化したのは昭和40年代~50年代にかけてのこと。本作品では、僅か10~20年で一気に開発される直前の姿を見れるだけでなく、そのあまりにもギャップのある純農村風景が興味深い。


さて、真一郎は弓子のことを忘れられずに悩むのですが、会社(時計工場)の屋上で考え込む...なんてシーンがあります。

この時、上空にヘリコプターがかなり低空飛行しているのが見えます。良く見ると、ヘリコプターからは無数のビラ・チラシと思われるモノがばら撒かれています。

昭和30年代の作品を観ていると、よく上空(飛行機・ヘリコプター)からチラシをばら撒く...というシーンが見られます。これは、当時の宣伝手法の一つとしてポピュラーだったようです。空から降ってくるチラシを「わーい」なんて言いながら追いかける子供達...というのも、合わせて登場したりします。が、現在だったら到底できない手法でしょう。街が汚れる、追いかける子供達が事故にあう...と非難轟々なのが目に見えます。今なら広告効果があるとは思えませんが、良くも悪くも注目だけは浴びるでしょうね。

この他、完成したばかりの丸の内線が登場したり...と、直前に迫った高度成長期の端緒も見受けられますが、高度成長期直前の姿を確認できるという点で面白い作品ですね。

theme : 映画を見て、思ったこと
genre : 映画

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Author:padavona
昭和30~40年代って面白い...ので、当時の映画・テレビ番組から気付いたことを気の向くまま書いています

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